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母べえの時代 [映画]

山田洋次監督、吉永小百合主演、「母(かあ)べえ」を観た。なぜか涙が止まらなかった。

正月に観た「続三丁目の夕日」の時もなぜか顔がくしゃくしゃになった。この時は、ポップコーンをつまんだしょっぱいティッシュで涙を拭いた。

今回は、持ち込んだ「カツサンド」についていた濡れティッシュを使ったら、顔中ソースだらけになった。


治安維持法下で思想や学問の自由が奪われ、拘置所で無残な日々を送る「父べえ」。どうすることもできない国家権力とその時代に対する悔しさか。

いや、拘束された夫を信じて疑わず一途な愛に生きる妻佳代。次々と襲う不幸な出来事へ力強く気丈に生きようとする強さへの感動か。

こみ上げてくるものをこらえてもこらえきれない。

「三丁目に夕日」は自分の育った時代背景とほぼ重なっていたが「母べえ」はまさに日本が第2次世界大戦に突入する戦時中の話、われわれの親や祖父母の時代の物語である。


原作は、野上照代の「父へのレクイエム」。彼女は1927年生まれ。敗戦の年18歳。「自分の少女時代のことを書いた作品」(雑誌「世界」2月号)という。

12月8日の太平洋戦争開戦のラジオニュースが流れていたので13歳からぐらいの時のことである。

彼女の父は、日大の教授時代、戸坂潤らの唯物論研究会に入っていた。研究を目的とした団体だったが「思想的によくない」ということで、32年に大学を追われる。

山田監督は前出の「世界」で、この研究会の講演会に丸山真男が参加したことがあり、その場で逮捕されたというエピソードも紹介している。



治安維持法は、23年、関東大震災を契機に成立した法律だか、その後幾度か「改正」を重ね、事実上の「体制批判」を事前に取り締まる悪法と化していく。

映画では、佳代が獄中に差し入れる書物を大学時代の恩師に借りにいくシーンがある。

恩師は「悪法も法だ」といって、教え子を批判する。佳代は「あの人がどんな悪いことをしたというのです」と応じる。失望して、一緒にいった照べえとすぐ家を出る。

この場面は山田監督によると、哲学者久野修が恩師との間で実際にあったやりとりをヒントにしたようだ(前出「世界」)


さて、佳代は、夫が拘置所に入りなかな釈放されない。ある日突然、「死亡」の電報。絶句する。

それにもめげず、代用教員として働きながら二人の子供を育てる。やがて、終戦。しかし、まもなく、結核で亡くなる。


映画の最後のシーンは、病室で息を引き取る間際の照べえとは母べえの会話。

照べえは「あの世で父べえにやっと会えるね」と手を握り締め話しかける。

聞き取れないくらいの小さな声で母べえは「生きてて、父べえに会いたかった」

照べえは、泣き崩れ、幕が下りる。


戦地では、飢餓で死んでいく兵士がいる、国民は食糧難だというのに、特高警察の幹部は、すき焼きを食べ酒を喰らうシーンもある。

危機だ、危機だと叫びながら、大企業は大儲け、格差が拡大し、官僚と政治家は腐敗のきわみ。為政者は自分たちの意に反するものは、議論抜きで圧殺する。

時代は、変わった。しかし、底流に流れる民主主義の否定は今日もなお形を変え続いている。

いい映画だった。

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