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幻の蕎麦を求めて=道東蕎麦紀行 [北海道の手打ちそば]

道東といっても、北見、網走方面である。連休を利用して美味い手打ち蕎麦を探し歩いてきた。

3軒歩いたが、このうち2軒はここ数年に開店した店で、脱サラや蕎麦の生産農家が開いた店。

いずれも手打ち蕎麦を極めようとする意気込みが感じられ、そしてその「匠の技」が伝わってくるいい店だった。

まず、清里町は「秀峰庵」斜里岳の麓、あたりはジャガイモとビート畑ちょうど釧網線の清里と札弦の中間の畑の真ん中にあった。
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ここの蕎麦は、私が探し求めてきた幻の蕎麦「牡丹」の新蕎麦だった。もちろん清里町産である。細切りで若干薄い緑色。歯ごたえ抜群。しかし、雨耕庵の牡丹よりは甘みが感じられなかった。
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店主は農家。店内においてあった「男の愉しみ方」?とかいう雑誌にも紹介されていた。帯広の「小川」で修行したらしい。
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次は「そば切り温(おん)」これまた山の中。網走市呼人の山中。国道39号線を北見方面から行くと、市街地の入り口に東京農大へ行く道がある。そこを天都山方面へあがり、「感動の径」という案内板を右折してしばらく行くと看板がある。
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ここの蕎麦は、オホーツク産とある。キタワセらしい。店主は私と同じ年代。53歳で網走市役所を退職。この昭和をイメージする隠れ家を2年半かけて自分とその仲間で建てたという。

28蕎麦で、もちろん石臼自家製粉。若干青汁を加えているらしい。蕎麦湯は別立て。ちょっとコシが弱い感じ。でも、どこからともなくやってくる車で店の周りは一杯。30席ほどの店内は満席だった。
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最後は「そば処ほんだ庵」北見市端野町。国道39号線沿いで端野消防署向かい。北見駅方面から行くと右手。
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ここの蕎麦は江丹別産の新そばだった。十割なのにぱさぱさ感がない。まろやか。甘みが強い。コシもある。麺は中太。私の好み。
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雨耕庵の投汁(とうじ)そば [北海道の手打ちそば]

これは最高。土鍋にタレをいれてコンロにかけ、それにもり蕎麦をつけ、おわんにとって食べる。こんな蕎麦の食べ方があったとは知らなかった。蕎麦のしゃぶしゃぶ。 聞けば、長野は奈川村の伝統的な食べ方だという。投汁とは、そばを入れ、タレにつけるための柄のついた竹製のざるのこと。

タレは、あっさりでこくがある。今日は、差し入れがあったという支笏湖でとれた「むき茸」というきのこ(写真3
枚目)それにえのき、まいたけ、かしわがはいってほとんど茸鍋状態。

きょうは、運転手つきだったので、できあがるまで冷酒を一杯。高知の「南」という特別純米酒。フルーティーでこれまた旨い。

最後に「そばがき」がサービス。残ったタレにつけて、ずるっ。これまた常識を覆す旨さ。とろろのような感じで、かたさがないのだ。おもわず唸ってしまう。牡丹蕎麦100%。タレはまったく最後までドロドロにはならない。「うちの蕎麦はならない」とご主人。牡丹特有の性質か。

これでなんと1人前1300円。

是非是非お試しあれ。

〔店名〕 そば切り 雨耕庵
〔住所〕西区西野6-5-5-25
〔電話〕 011-662-7361
〔営業時間〕午前11時から午後8時00分ころ 、火曜定休


〔雨耕庵の牡丹蕎麦=10月20日〕
極上の逸品である。やや黒味がかったほどよい太さの麺。つるっと喉に入る。噛む。歯ごたえがある。そして甘い。蕎麦が甘い?これはちょっとしたカルチャーショックというべきものかもしれない。

ここの蕎麦の品種は牡丹蕎麦という。道内では大正から昭和にかけて広く作付けされていたものの今では限られた農家しか生産していない。

今、国内で食される蕎麦粉の9割はカナダや中国からの輸入。残る1割が国内産だが、そのほとんどは北海道産。しかも、「キタワセ」という品種がほとんどなのでこの牡丹蕎麦はいわば「幻の蕎麦」なのだ。強い香りと甘さが特徴。

で、雨耕庵の店主はそれを浦臼町の農家から仕入れ、なんと昔ながらの石臼を使って、ごろごろ、ごろごろ、しかも自分の手で挽いているのだ。ほとんど商売を目的とした行為とはいえない。気の遠くなる話ではないか。

それで、その甘さの理由なのだが、蕎麦の殻を抜いたあと、実を包む皮の内側に甘味があって、石臼で挽く際にできるだけゆっくり回すことでその旨味が逃げていかないのだという。

蕎麦は三たてといって、挽きたて、打ちたて、そして茹でたてを理想とする。雨耕庵はこれを実践する稀有な蕎麦屋さんなのだ。昼時に駆け込む凡その蕎麦屋は、すでに機械で挽いた蕎麦粉で仕入れ、そして機械でこね、機械が切る。

雨耕庵は、その日打つ分だけ挽く。出来上がった蕎麦粉に加水し鉢でこねる。固まってきたところですばやく延して切る。そして、茹で、冷水でしめる。究極の蕎麦といっていい。

これで、わずか600円。手打ち蕎麦は量が少なく値段が高いのが一般的。それだけ手間隙がかかっているわけである。しかし雨耕庵は例外である。店主は、脱サラ。収入は約3分の1にダウンしたと嘆くが、この奥の深い蕎麦打ちにはまって、むしろたまらない恍惚感に浸っているようである。

店は、西区西野のひっそりとした住宅街の一角にある。自宅だった旧家を改装して開業した。壁には昭和を偲ばせる古い秤、時計が掛かっている。初めっていったのが今春。先週お邪魔したら、もう、懐かしいだるま型の薪ストーブに火が入っていた。縁側には、庭で栽培した玄蕎麦が天日干し。

私は昭和20年代の後半、農家の生まれ。この頃はまだ自給自足的な生活スタイルで、年越し蕎麦といえば、祖父が打つブツブツ切れる太い蕎麦だった。そばつゆには老鶏をつぶしたかしわが入る。それはそれは大変なご馳走だった。

もうしばらく、蕎麦を打っていない。今度は牡丹蕎麦に挑戦しようと思う。まだまだ駆け出しだが、自分で打つ蕎麦はなぜか美味しい。そして、それを振舞ったときに一層充実感を覚えるのだ。


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